未完映画「Que Viva Mexico!メキシコ万歳」

「戦艦ポチョムキン」等の作品で有名なロシア(当時ソ連)の映画監督セルゲイ・エイゼンシュテイン。実は彼、メキシコでも映画を撮影していたことがあるのです。

残念ながら、エイゼンシュテインが生きている間に、一つの作品としては完成しなかったのですが、当時、助監督として同行していたグリゴーリ・アレクサンドロフが、撮影中断から50年近くも経った後に編集をし、1979年に未完成の映画として発表したのが「Que Viva Mexico! (メキシコ万歳)」です。

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メキシコ人の末裔はアステカ人であるという描写の映像

エイゼンシュテインらが撮影の為にメキシコ入りしたのは、1931年の正にメキシコ革命の名残がまだまだ残る最中。ストーリーは(詳細は伏せますが)、プレヒスパニック時代から、スペインの植民地、独裁政治、メキシコ革命までの時代それぞれを舞台とした、4つのエピソードで構成されています。

この映画には、登場人物には一切の台詞はありません。音楽とナレーションだけのモノトーンの映像が、返ってメキシコの素朴さをより際立たせ、独特の死生観や結婚観等が、幻想的に映ります。

また、プロの役者さん達ではなく(一部プロの役者さんが出演)、現地の人びとに演技をしてもらったり、彼らをドキュメンタリー的に追ったようなシーンが集められています。その映像には息を呑むような美しさに見惚れてしまう一方、目を背けたくなるような暗い歴史を象徴するリアリティあるシーンも登場します。

その極端な描写の二面性が、正に、「メキシコの文化とは?」と言う問いを投げかけているようで、確かな答えが何度観ても見つからないので、思わず何度も繰り返し観てしまう理由なのかもしれません。もしかしたら、この映画が未完であることも含めて、この問いかけこそがこの映画の最大の魅力なのではないかと、個人的に感じています。

オアハカのテワンテペック地方の結婚式の様子 ポンセの音楽にも注目!

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コンキスタドールと呼ばれるスペイン人による征服を表すマスクと踊りのシーン

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スペインからカトリックの信仰と闘牛の文化が持ち込まれたことを象徴するようなシーン

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メキシコの独立を目指した市民による革命が始まると、ソルダデラと呼ばれる女性戦士たちも少なくなかった

因みに、私がこの映画に初めて出会ったのは、30年程前、青山の草月会館での上映会でだったような記憶です。当時の私には衝撃が強く、暫く煮え切らなさでモヤモヤした気持ちが残った事を今でも鮮明に覚えています。この時の、この映画の続きを見てみたいという好奇心が、その後の私のメキシコ文化研究への原動力につながっていったのかもしれません。

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親交のあったディエゴリベラとフリーダカーロ夫妻とエイゼンシュタテイン

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こんな解説書も出ています。古すぎてカビカビですみません

そして、なんと!現在、youtubeでこの映画のフルストーリーを観ることが出来ます。賛否の分かれる作品かもしませんが、ご興味のある方いらしたら、是非覗かれてみてください。

私が最初に購入しがVHSはこのジャケット

Que Viva Mexico! メキシコ万歳
監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン (グレゴーリ・アレクサンドロフ)
製作国:ソ連(ロシア)
上映時間 :86分
言語:ロシア語ナレーション(英語字幕)

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